アメリカ人アーティスト、アレックス・カッツ（Alex Katz）の作品集。1947年から2022年までにおよぶ、作者のプリント（版画）作品をまとめたカタログ・レゾネである。

ポップ・アートが本格的に始動する以前の1960年代初期、作者は映画やテレビ、ビルボードの広告に影響を受けたアイコニックなスタイルの造形美術を発展させ、超然としているようでとびきりスタイリッシュに、ニューヨークのポートレートや牧歌的な風景画を描き出した。その作品群において、プリント作品シリーズも重要な要素である。特徴的な輝かしい絵画の色使いを失うことなく、リトグラフやエッチング、シルクスクリーン、板目木版、リノカットを用い、自身のその奔放な美学を作品で再現し、反映し、そしてさらに精錬させた。プリント作品のカタログ・・レゾネの初版が刊行された2011年以降、作者のプリント作品の数は倍にまで増えた。折よく今回出版することとなった新版である本書には、全プリント作品、カットアウト、アーティストブック、そして、本の挿絵や公的なアート・プロジェクトなど応用美術作品リストも収録。また、現代における主要なアメリカ人アーティストの一人の作品として造詣の深い視点をもたらしてくれる書き下ろしエッセイや作者のインタビューも収めらている。

作者がアーティストとして活動し始めた1950年代は、抽象表現主義が君臨していた時代だった。作者は時代を先駆け、フラットでモノクロームな背景に様式化したポートレートを作り出していた。1965年以降は、伝統的な職人芸から最先端の複写技術まで余すことなく全ての可能性を試しながら、版画の分野で実りの多いキャリアを積んでいる。

Before the rise of Pop Art proper, Alex Katz developed an iconic style of figurative painting in the early 1960s— influenced by film, television, and billboard advertising. Seemingly detached and incredibly stylish, he created portraits of the New York scene as well as idyllic landscapes. Printmaking plays an equally central role in Katz’s work. He uses lithographs, etchings, silkscreens, woodcuts and linocuts to reproduce, reflect and further reduce his bold aesthetic, while retaining the radiant color characteristic for his paintings. Since the first edition in 2011, Katz has almost doubled his output of prints—this timely new edition includes his complete prints, cutout editions, artists’ books, and also lists his works of applied art like book illustrations and public art projects. New essays and interviews with the artist give profound insights into the work of one of the foremost American artists of the present.